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なぜ、今、再保険会社を設立するのか?

世界は再保険を扱うスタートアップにとって住みやすい場所ではないようです。
再保険や保険リンク証券(insurance-linked securities(以下、「ILS」)市場には、4200億ドルという驚異的なキャパシティがあると言われています。ただ、どのような観点から見ても料率は何年も軟調で、年々さらに低下しています。

再保険会社は2016年もほとんどの分野で利益を維持していましたが、その主な理由は、料率の上昇や新たな再保険料の供給源ではなく、米国で大規模な災害による損失が発生しなかったこと、資本管理戦術、そして旧来型ビジネスが好調だったことによるものです。

再保険料の新たなポテンシャルマーケットは存在するものの、いわゆる「カバレッジ・ギャップ」が大きく広がっています。
伝統的な財物補償やパラメトリック・リスクのうち、地震や洪水の要素は引き受けが難しく、少なくともこれらの壊滅的なリスクに対する再保険のカバレッジは確保しにくくなっています。
またサイバー保険は、企業にとって日々必要性が高まるカバレッジですが、再保険会社はこれまでのところ、大きなキャパシティを提供できていません。

ILS市場は、伝統的な投資市場とは無関係のリターンを求める資本市場のニーズを利用しているという側面においては、カバレッジ・ギャップの一部を解消できるかもしれない可能性を秘めています。一方で、ILSの発行には時間がかかり非効率的なプロセスを伴うため、一度設定されたリスクの取引や再取引ができないという点で比較的「硬いセキュリティ」となります。
結果、リターンが制限され、資本に壊滅的なリスクが生じる可能性があります。

これらのことから、一般的な再保険会社として市場に参入しようと考えているスタートアップには、大きな困難が待ち受けています。一方で、世の中には再保険されていないリスクが膨大にあるため、そのような新興リスクに対応できる新たな再保険ソリューションへの期待が寄せられます。成功を収めたい再保険スタートアップは、このような課題に応える必要があります。従来の再保険会社ができることを超えて、再保険可能なものをどのように深め、広げていくのでしょうか?たとえば、伝統的な再保険とILS発行の最良の特徴を組み合わせて、再保険ビジネスを今日のニーズに合わせて進化させるにはどうすればよいのでしょうか?

Extraordinary Re社では、以下のような取り組みから再保険ビジネスの課題にアプローチしています。

1)再保険の引き受けやクレーム処理などのオペレーションについて、一般的に使われている仕組みを可能な限り活用すること。

2) 保険の専門家、ヘッジファンド、金融商品やコモディティのトレーダー、年金基金の機関投資家など、あらゆる資本が再保険に投資し、再保険リスクを負担するようなモデルを構築すること。

3) 保険とトレーディングの専門知識とリスクを取る意欲を組み合わせることで、価格設定の難しいリスクを引き受ける能力を広げ、保険会社や仲介業者と競合するのではなく、それらに利益をもたらすこと。

4) 現在のILSモデルよりも進化した、リスクの発生時のバインディングから再保険リスクの解決まで、リアルタイムにリスクを引き受けたり、降ろしたりする能力を提供すること。

Extraordinary Re社のモデルは、標準的なバミューダの再保険会社のインフラを、再保険されたリスクを細分化する内部メカニズムで補完し、資本市場の投資家が日々の展開に応じて、必要なだけリスクを引き受けたり減らしたりすることを可能にしています。

再保険業界は、個人や企業にサービスを提供するリテール保険会社のピーク時のリスクの蓄積を共有することで、世界経済において重要な役割を果たしています。従来の再保険会社は、過去のデータに基づいてリスクを評価し、バランスシート上に保有することでその役割を果たしてきました。しかし、世界経済の成長や新技術の登場により、従来のモデルには当てはまらない新たなリスク(サイバーリスクなど)が生まれています。Extraordinary Reは、この課題に取り組んでいる企業の一つであり、トレーディングプラットフォームを通じて投資家にリスクを配分するという新しいモデルは、保険リスク移転市場を恒久的に変化させようとしています。

(本記事は、Plug and Play HQに掲載されている記事を翻訳したものです)