「最大24.2倍」という驚きの数字
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「最大24.2倍」という驚きの数字

共済会事業は、相互扶助事業と自助支援事業のバランスが大切というのが前回までの話でした。
相互扶助事業は慶弔給付や貸付事業のことで、自助支援事業とは法人契約による割引や補助金支給によって共済会員が少ない自己負担でやりたいことができる支援のことを言うのでした。
さて、今回は、新たに共済会が抱える課題について考えていきます。


――共済会事業が抱える課題には具体的にどんなものがありますか?

設立されて何年も経っている共済会が共通して抱える課題があります。
それは、
1 )共済会の収入が支出を大きく上回り、毎年剰余金が発生。それが積み上がって必要以上の余剰積立金がある
2 )逆に支出が上回り、共済会財政が逼迫している
3 )共済会の存在意義が見失われ、職域内の福利厚生の一翼を担っているにもかかわらず共済会の存在感が薄れている

「1」の課題は多くの共済会が抱えています。「2」は多くの共済会ではないですが、深刻な課題です。「3」は多かれ少なかれ認識されている課題です。

――「1」の課題を抱えている共済会が多いというのは、にわかには理解しづらいですね。これは具体的にどういうことなのでしょうか?

では、まず「1」の課題について見ていきましょう。共済会の収入は、共済会員からの会費収入と母体事業主からの拠出金で構成されています。これ以外に積立金の運用益や独自収入を持つところもあります。

――会費や拠出金額は、設立時に共済会事業に必要な額として算定されているはずですよね。

年間で必要な共済事業経費を見積もり、それを共済会員数で割れば、会員一人あたりの負担が算定されます。それを労使の負担割合で按分すれば、共済会費と拠出金の額となります。よって、少なくとも設立時には収支は均衡しているはずなのです。

――それがどうして余剰金になるのですか?

最大の原因は、共済会員の属性の変化です。母体法人で働く人の平均年齢は組織が拡大しているうちは若いままですが、組織の規模が安定すると次第に平均年齢が上がります。若い会員が減れば慶弔給付の結婚祝金、出産祝金、入学祝金といったライフステージでいう家族形成期に支給される給付金の申請件数が少なくなり、支出が減って余剰金が増えていきます

――なるほど。

高年齢の会員が増えれば、医療費や休業時の給付などが増える傾向にあります。つまり補償給付が少ないと収支は余剰が発生し、反対に補償給付が多いと,先に述べた「2」のように収支は悪化します。一般には、補償給付は多くの財源を必要とするので、そこまで給付の幅を拡大している共済会は多くはありません。

――それなら共済会事業の内容を見直せばいいのではないですか?

そうです。健全な収支と財政を維持している共済会では、専任の共済会事務局や常務理事などが見直しを行っていますが、母体事業主の規模が大きくない場合や専任担当がいない場合は、事業の見直しに着手できないことがあります。

――日々の業務が忙しかったり、そもそも人手不足だと、なかなか難しいのかもしれませんね。

また「3」のように共済会の存在感が薄れていると、共済会員や母体事業主が剰余金や過剰な積立金を問題視しなくなり、放置されることもあります。私が見た事例では、年間の収入額の24.2倍に相当する過剰な積立金を保有している共済会がありました。

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――24.2倍ですか。ということは、24年間会費や拠出金をもらわなくても支出が賄えるということですよね。

この共済会の母体はアパレル業で、かつて大きなリストラが行われ会員数が減少したことも一因ですが、共済会の規約や給付規程が30年以上見直されていなかったことが最大の原因です。共済会の財政を見る指標のひとつがこの積立金倍率で、積立金倍率=期末積立金÷当期の収入額(会費、拠出金等)で算定されます。24倍は明らかに過剰です。

――指標があれば見直すきっかけにもなりますね。どのくらいの積立金倍率が適正なのでしょうか。

私がこれまでコンサルティングしてきた共済会の積立倍率の平均は、約1.2倍です。

――収入の1年分強ですか。納得できる数値ですね。

 しかしこれはあくまで平均値であり適正値ではありません。共済会の毎年の給付は変動します。たとえば、新型コロナ禍で結婚や出産を控える人が多いため、全国の共済会の結婚祝金や出産祝金の2020年度給付件数は減少しているでしょう。外出自粛の影響からか、全国の死亡者数も減少しています。またここ数年、台風などによる局所的な水害で災害見舞金の給付件数が急増している共済会もあります。このように支出は毎年変動します。支出が増加してその年の収入額を上回った場合でも、しっかり給付されるのが積立金の役割です。

――なるほど、変動幅の吸収ということですね。

積立金の役割はもうひとつあります。それは将来発生するであろう給付に備えた事前積立です。たとえば災害見舞金は、局所的な水害を除けば普段はあまり給付件数は多くありませんが、都心南部直下型地震や南海トラフ地震の発生など、大災害が発生した際の給付に備えて積立金は必要です。

――大災害の備えとなると、とてつもない金額になりますね。

もう一つ、将来の発生が確実なのが退会餞別金です。たとえば、「在会10年以上で退会すると、退会餞別金10万円を支給する」という給付規程があれば、在会10年以上の会員数×10万円の給付額が将来必ず発生します。適正な企業会計基準に準じるなら、会員の在会1年につき、1万円を退会餞別金支払準備金として引き当てるべきでしょう。会員の高年齢化が進んでいる共済会では年々支出が増えています。積立金はこうした引当金・準備金としての役割もあるのです。

――となると、災害見舞金や退会餞別金の給付に備える額を超えた部分が、本当の意味で「過剰な積立金」といえますね。


今回はかなり具体的な話をお伺いしました。共済会事業がその本領を発揮できていないのは、従業員のライフステージに合わせた共済会事業の定期的なメンテナンスが出来ていないことに起因していそうです。

このマガジンでは、ひきつづき可児先生にお話をお伺いしていきます。次回もお楽しみに!

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