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「英大手保険会社Direct Line GroupのCMOによるテクノロジーを活用した保険のリブランディング」

家や車、最新のガジェットを持ってから、保険のことを考えるようになったとき、年間契約や不明瞭な価格設定、現実的な生活スタイルにそぐわないような複雑なサービス内容などを思い浮かべます。
Hot Topics社では、Direct Line Groupのマーケティング・ディレクターであるマーク・エヴァンス氏にインタビューを行い、同グループが消費者の需要に応えるためにどのように新しい技術を取り入れているかについて伺いました。

エヴァンス氏は自分の役割の重要な部分を、ブランドを再活性化させて新たな顧客を獲得し、マーケティングチームに『保険の常識』に挑戦するように仕向けることだと考えています。Direct Line Groupでは、保険業界の常識を覆すようないくつかの新しい取り組みを導入しています。例えば、紛失や事故に遭った車7日以内に、携帯を48時間以内に取り戻せたり、配管工を3時間以内に手配することができる ー これらは顧客を失望させることなく彼らの期待に応えるために、その場その場でのニーズに対応すべく保険業界における変化に率先として取り組むという事例です。

IoTやブロックチェーン、自動運転、コネクテッドホームなど、保険はこのような新しい技術によってディスラプトされたり、影響を受けたりする可能性が最も高い分野の一つです。Direct Line Groupの試算によると、自動運転の発展により、道路での事故が起こらなくなるため、今後保険料の20~90%が消滅する可能性があるとのことです。長い時間がかかるでしょうが、このような激動的で実存的な変化が起きている今、マーケターが時代の先を行き、顧客にどのようにサービスを提供するのがベストなのかを真に理解することが肝要となります。

またエヴァンス氏は次のように述べています。「私たちは、お客様に優れたサービスと製品を提供し続けなければなりませんが、同時に、アジテーターとして未来をもたらすためのスペースと時間も確保しなければなりません。例えば、私たちは昨年、Fleetlightsという新しい提案を開始しました。これは、車に乗っている人が安全に移動できるように道を照らすドローンです。」

このイノベーションは、エヴァンス氏がDirect Line Groupのシニアチームとともに設定している将来のビジョンを裏付けるものです。保険のあるべき姿を問題が発生したときにそれを解決するというモデルから、問題の発生を未然に防ぐことができる業界のリーダーになることへとシフトしています。少し空想的に聞こえるかもしれませんが、Direct Line Gruopは明日のビジネスに今日から火をつけることに集中しています。


マルチチャネル・マーケティング
短期的かつ一時的な顧客接点ではなく、長期的に顧客に寄り添い関係構築をしていくことが求められる現代では、お客様はパーソナライズされたより良い体験や、真の関係を求めており、顧客は価格を検討するよりも先に考慮に入れています。保険業界では、人々がどのように保険商品を購入したいかという点で変化が見られます。Direct Line Groupは、この変化への対応において、業界の第一線にいることを誇りに思っています。

「当社のお客様の中には、価格を重視し、自分が購入しているサービスを十分に理解していない方もいらっしゃいますが、それは構いません。また、保険に加入している方の中には、より身近な存在として直接コミュニケーションができる距離感を望んでいる方もおり、そのような関係がいざというときに役立つことを理解しています」とエヴァンス氏は説明します。保険商品の購入は複雑なものであるという考えから、携帯電話による購買体験を促すことは後手に回っているという事実に気が付いていました。しかし、お客様は高額な買い物をする際には、人との触れ合いや安心感を求める傾向にあります。

そこでモバイルが鍵となります。Direct Line Groupは、自分でウェブサイトをコーディングできるかもしれないし、携帯電話で生活していても保険のことをよく知らない21歳の人が、自分の好きなコミュニケーション・チャネルを通じてブランド・プロミスや当社が提供する商品を知る必要があると考えています。そのため、マルチチャネル・マーケティング・アプローチは、当社のマーケティング戦略において非常に重要です」とエヴァンス氏は述べています。

Direct Line Groupは、業界で初めてモバイルを導入し、デジタルに精通した顧客のための顧客体験の担い手として活用しています。このモバイルアプリは、人々の運転技術を測定し、道路上での能力に応じて報酬を与えるものです。この製品は、試験に合格したばかりの免許取得1年目で他のドライバーに比べて事故の可能性が8倍も高い『Z世代』をターゲットにしています。
このようなアプローチは、Direct Line Groupがいかにお客様と真に向き合っているかを示すものです。特定の顧客に向けてカスタマイズされた商品と、商品主導ではなくブランド・プロミスに焦点を当てたマルチチャネル・マーケティング・キャンペーンにより、「保険業界に信頼と真の価値を取り戻した」とエヴァンス氏は言います。「保険のような業界でも、クリエイティブなコミュニケーションと本物のストーリーテリングは、マーケティングにおいて大きな役割を果たしています。」

新商品を提供し、Direct Line Groupが多角的な顧客ニーズに添えるようににサービスを提供する方法を変えるためには、サプライチェーンやバックエンドシステム、プロセス全体を完全に再構築し、お客様が特定ブランドのサービスを選ぶ瞬間に競合他社よりも優れたサービスを提供できるようにしなければなりませんでした。もちろん、このような内省的な改革は、社内の変化を促し、エヴァンス氏自身のマーケティングチームにも、よりプレゼンスを高めていく刺激になりました。

彼はチームメンバーが自分自身の内なる声に気づき、優れた組織がマルチチャネル・マーケティングに必要とするリーダーシップ機能を果たしていると言います。彼は、マーケターのツールキットの中で新しいチャネルを受け入れることを信じていますが、同時に物事を前向きに捉えることも大切にしています。エヴァンス氏はこう言います。「今、すべてのマーケターは、ウェブサイトのコーディングができる程度にデジタルな活動ができるべきだという考えがありますが、私は同意しかねます。マーケターは基本的にチャネルにとらわれてはいけません。チャネルを意識し、それを活用することは必要ですが、不可知論的でなければなりません。」エヴァンス氏は、視聴者に対するメッセージの力が重要であると考えているようです。

Direct Line Groupがすでに実施している、あるいは今後予定している新しい取り組みは、すべてうまくいっています。過去5年間で、同社の顧客エンゲージメントは40%増加しており、この継続的な成長がすぐに鈍化するという証拠はありません。

(本記事は、Plug and Play HQに掲載されている記事を翻訳したものです)